書評 佐野真由子氏『幕末外交儀礼の研究』

幕末期の日本は日米和親条約と日米修好通商条約の2つの条約を締結したことによって、「西欧」へと投げ出された。 和親条約の第11条の規定によりタウンゼンド・ハリスがアメリカ総領事として下田に着任したのは安政3(1856)年7月21日のことであった。 佐野 …

【エッセイ 徳川家茂】

今回は番外編として第14代将軍・徳川家茂について述べたい。幕末期の将軍というと、徳川慶喜の名を思い浮かべることが多いかもしれない。しかし慶喜が「征夷大将軍」であったのは慶応2(1866)年12月から慶応3(1867)年10月のわずか1年弱というごく短い期…

びっくりぽんな幕末維新史~広岡浅子

「あさが来た」が最終回を迎えました。そこで「あさ」こと、広岡浅子の経歴を振り返りたいと思います。浅子は京都油小路出水の小石川三井家6代当主である三井高益の4女として嘉永2(1849)年に生まれました(西園寺公望が同年の生まれです)。三井高益が50歳…

書評 竹内誠(他)編『徳川「大奥」事典』

「大奥」は、江戸城内の公的空間である「表」や将軍の居住・執務空間である「奥」に対して将軍やその家族が住む私的空間である。今や見る影もないが、誰もが一度はその言葉を耳にしたことがあろう。近年はドラマや小説などで、絢爛豪華なイメージとともによ…

びっくりぽんな幕末維新史~渋沢栄一

「あさが来た」を観た。明治20(1887)年頃だろうか。「銀行の神様」こと渋沢栄一が登場。渋沢は天保11(1840)年生まれなので数え年で五代より6歳年下である(!)渋沢は、2月13日、武蔵野国榛沢郡血洗島村(現在の埼玉県藤沢市)の養蚕や製藍を営む家に生…

【びっくりぽんな幕末維新史 〜 五代友厚】

ドラマ「あさが来た」で主人公・白岡あさの人生に強い影響を与えた五代友厚が亡くなりました。いうまでもなく、この五代は幕末明治を生きた実在の人物です。個人的には五代とあさの最期の交流や想いを丁寧に描いたとても感動的な回であったと思います。「五…

「花燃ゆ」についてのつぶやき 第18話〜第27話 まとめ

「花燃ゆ」についてのつぶやき。安政7年(1860)2月頃〜文久2年(1862) 1月頃。久坂玄瑞 21歳〜23歳。小田村伊之助 32歳〜34歳。 安政7年(1860)3月3日、井伊直弼が薩摩人を含む水戸系浪士18名に殺害されました。いわゆる桜田門外の変です。井伊直弼 享年46。…

「花燃ゆ」についてのつぶやき 第1話〜第17話 まとめ

「花燃ゆ」についてのつぶやき。ナレーションによると嘉永三年(1850)ですから松陰21歳、この歳九州遊歴の旅をし長崎にも足を伸ばしています。松陰の身分が毛利家の兵学師範ということもポイントでしょうか。 八重の桜のイメージとも重なる印象を受けました…

 論文感想 藤田英昭氏論文 「徳川慶勝の幕末『異郷』体験」を読む

平成二十六年新宿歴史博物館「高須四兄弟」展展示図録所収の藤田英昭氏の論文「徳川慶勝の幕末『異郷』体験」を紹介したい。論文の筆者である藤田英昭氏は幕末維新期の徳川家や、草莽(一般には「志士」と呼ばれる)など多岐に渡る研究をしている方である。 …

家近 良樹氏『人物叢書 徳川慶喜』

評者は家近良樹氏(以下 著者)の書籍が好きだ。『幕末維新の個性1 徳川慶喜』など大学時代に夢中になって読んだことを昨日のことのように覚えている。本書『人物叢書 徳川慶喜』は著者にとって上記の『幕末維新の個性1 徳川慶喜』(吉川弘文館、二〇〇四年…

幕末維新史雑考

大河ドラマ「八重の桜」で幕末維新史が注目を浴びている。ここでは筆者が幕末維新史を勉強しながら気になっていることを取りあげてみる。幕末の志士の代表格といえば坂本龍馬という名前を頭に浮かべる方が多いだろう。しかし龍馬の事績を史料で分析をするこ…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第11話 感想

「八重の桜」第十一話。「守護職を討て!」。お話の時期は佐久間象山が殺害され、さらには「禁門の変」の直前期となる元治元(一八六四)年七月。八重二十歳。元治元(一八六四)年七月十一日、佐久間象山は以前より親交のあった山階宮晃親王(やましなのみや…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第10話 感想

「八重の桜」第十話。「池田屋事件」。お話の時期は(テロップでは元治元年四月となっていましたが)佐久間象山が上洛を果たした元治元(一八六四)年三月頃から新島七五三太が函館からアメリカへと「密航」した元治元年七月頃でしょうか。八重二十歳。元治…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第9話 感想

「八重の桜」第九話。「八月の動乱」。お話の時期は「文久政変」―八月十八日の政変―が計画、実行された文久三(一八六三)年八月から翌元治元(一八六四)年の三月頃まででしょうか。八重十九歳〜二十歳。文久三年八月以前の朝廷は三条実美などの「即今破約…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第8話 感想

「八重の桜」第八話。「ままならぬ思い」。お話の時期は第十四代将軍・徳川家茂が初めて上洛し、御所に参内した文久三(一八六三)年三月から会津松平家が「馬揃」を天覧に供した文久三(一八六三)年七月頃でしょうか。八重十九歳。文久三年三月四日、徳川…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第7話 感想

「八重の桜」第七話。「将軍の首」。お話の時期は越後浪人・本間精一郎が殺害された文久二(一八六二)年閏八月二十日頃からいわゆる「足利三代木像梟首事件」が起き、会津松平家が「言路洞開」から浪士の捕縛へと方針転換を行う翌文久三(一八六三)年二月…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第6話 感想

「八重の桜」第六話。「会津の決意」。お話の時期は嘉永七(一八六〇)年三月の「桜田門外の変」から松平容保が京都守護職を拝命する文久二(一八六二)年閏八月まで。八重一六歳〜一八歳。「桜田門外の変」での井伊直弼の横死後、容保は、水戸徳川家討伐の…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第5話 感想

「八重の桜」第五話。「松陰の遺言」。お話の時期は吉田松陰が江戸で取り調べを受けている安政六(一八五九)年七月頃から「桜田門外の変」が起きた翌年の万延元(一八六〇)年三月まで。八重十五歳〜十六歳。吉田松陰が公儀(幕府)の評定所に最初の呼び出…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第4話 感想

「八重の桜」第四話。「妖霊星」。お話の時期は(時間軸がずれていますが、前回よりさかのぼって)山本覚馬の「禁足処分」が解かれた安政五(一八五八)年二月頃から「安政の大獄」開始直後の安政六年五月頃までのようです。八重十四歳〜十五歳。劇中、西郷…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第3話 感想

「八重の桜」第三話。「蹴散らして前へ」。お話の時期は(ドラマのテロップでは安政四<一八五七>年春となっていましたが、)おそらく会津に蘭学所が設置された安政六(一八五九)年頃から覚馬が禁足処分を受けた万延元(一八六〇)年頃まで、が良いのでは…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第2話 感想

「八重の桜」第二話。「やむにやまれぬ心」。お話の時期は嘉永七(一八五四)年三月に「日米和親条約」が締結されてから安政三(一八五六)年に山本覚馬が会津に帰郷するまで。八重十歳〜十二歳頃。八重は夜中、密かにゲベール銃の練習をしている所を父・権…

「八重の桜」を愛でる つれづれなるままに 第1話 感想

「八重の桜」第一話。「ならぬことはならぬ」。お話の時期は嘉永四(一八五一)年二月に松平容保が初めて会津に赴いてから嘉永七(一八五四)年、ペリーが再び来航するまで。いよいよ「八重の桜」が始まりました。この物語の主人公である山本(新島)八重は…

書評 『写真家大名・徳川慶勝の幕末維新―尾張藩主の知られざる決断』

本書『写真家大名・徳川慶勝の幕末維新―尾張藩主の知られざる決断』は、二〇〇九年八月二十三日に放送された「幕末 知られざる決断 尾張藩主・徳川慶勝」というテレビ番組をもとにして編まれている。本書の主人公ともいうべき徳川慶勝は幕末期の尾張徳川家の…

書評 『池田屋事件の研究』

心待ちにしていた、中村武生氏の『池田屋事件の研究』を読んだ。われわれは「池田屋事件」の「事実」についてどれほど知っているであろうか?ページをめくるたびに、「知られざる池田屋事件」が姿を現し、池田屋事件について、ほとんど何も知らなかったこと…

 論文感想 藤田英昭氏論文 「草莽と維新」を読む

明治維新史学会編『講座 明治維新3 維新政権の創設』(編集 松尾正人氏・佐々木克氏)所収の藤田英昭氏の論文「草莽と維新」を非常に楽しく読んだ。論文の筆者である藤田英昭氏は、幕末維新史を「徳川家」の立場から、今まで知られていなかった史料を使いな…

書評 松尾正人著『木戸孝允』

木戸孝允をテーマにした本はそう多くはない。そんな中、本書は成立したての維新政権と明治という社会と木戸孝允の関係をを事細かに史料(資料)を追いながら記述している。明治初期の政治・外交史、そして木戸孝允の研究をしたい人にはうってつけの本。この著…

書評 久住真也著『幕末の将軍』

徳川第14代将軍・家茂を史料を丹念に読み解き、その実像を明らかにしようとした本書。 徳川家茂というと幕末史を勉強したいという人には避けて通れない人物である。 有名であるのに、家茂の研究書は少ない・・・。そのような現状に一石を投じている。 8代将…

書評 家近良樹著『孝明天皇と「一会桑」―幕末・維新の新視点 』

学に入学直後に生協でふと、手にした本書。本当に自分の「幕末維新観」を180度覆してくれた1冊。 現在の幕末維新研究では「常識」とされている「一会桑」の視点を取り入れ、幕末の京都情勢を改めて分析している。内容の面白さに加えて、著者の文章もとて…

書評 岩下哲典著『幕末日本の情報活動―「開国」の情報史』

「ペリー日本に来(きた)る」という「情報(ペリー来航の予告情報も含まれる)」を幕末当時の日本人(吉田松陰などの知識人や尾張家当主・徳川慶勝・開明派大名といわれる伊予宇和島の伊達宗城らの領主層、また当時を懸命に生きていた庶民など)がどのよう…

書評 『幕末学のみかた』

幕末・明治維新研究の学問的水準がわかる本。 大学時代に評者は本書を読み、本格的に幕末・明治維新史を勉強してみたくなった。 幕末・明治維新研究の第一人者がオムニバス形式でエッセイを載せており、それぞれの研究分野・スタイルが垣間見えて面白い。学…