書評 久住真也著『幕末の将軍』



徳川第14代将軍・家茂を史料を丹念に読み解き、その実像を明らかにしようとした本書。

徳川家茂というと幕末史を勉強したいという人には避けて通れない人物である。

有名であるのに、家茂の研究書は少ない・・・。そのような現状に一石を投じている。

8代将軍・吉宗の時代から話を掘り起こし、江戸時代の象徴的将軍・第11代家斉に江戸時代の「理想」と「権威」と「伝統」を見出し紀州家出身である家茂の「格」と「血脈」を論じている。

本書の記述は江戸時代に流れていた「格式」を丁寧に書いてくれている。まるでスリリングなゲームブックを読むかのように楽しめる。また家茂を通して慶喜を見ることで、「機動性のある」「最後の将軍」の姿も垣間見ることができる。「江戸の将軍」から「幕末の将軍」への変質。

幕府・幕末研究に奥行きを持たせる一冊☆