書評 岩下哲典著『幕末日本の情報活動―「開国」の情報史』

「ペリー日本に来(きた)る」という「情報(ペリー来航の予告情報も含まれる)」を幕末当時の日本人(吉田松陰などの知識人や尾張家当主・徳川慶勝開明派大名といわれる伊予宇和島伊達宗城らの領主層、また当時を懸命に生きていた庶民など)がどのように受け取り、分析し活用したのかということを史料から丁寧に浮かびあがらせた書。著者の岩下氏は幕末情報史のエキスパート。「歴史学」の世界に「情報史」の発想という新しい風を巻き起こしたといって良いだろう。「情報」をどのように取り扱うのか―という、一見単純なこの問いかけは現代においてより一層重要度を増しているように思える。
著者の明快な語り口は「(現代に生きる我々は)常に未来からの挑戦を受けている」というメッセージを発しているようにも思われる。